系統用蓄電池とは
近年、再生可能エネルギーの発電設備が増加するにつれ、需要と供給が一致しない状態が見られるようになりました。「系統用蓄電池」がなぜこれほど注目されているのか、背景をもとに仕組みや役割を解説していきます。
系統用蓄電池が注目される理由
系統用蓄電池が注目される理由として、政府が目標に掲げている2050年カーボンニュートラル実現が後押しとなっていることが挙げられます。
太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーの導入量は確実に増加していますが発電量が天候や季節に左右されやすく安定的な電力供給が難しいという弱点があるため、せっかく発電しても、使い切れず、捨てられるケースも少なくありません。
この「再エネの不安定性」という問題の解決に期待されるのが「系統用蓄電池」です。
系統用蓄電池の仕組み
系統用蓄電池は、電力ネットワーク(通称「系統」)に直接接続する蓄電池です。再生可能エネルギー電源に併設される蓄電池と異なり、特定電源の出⼒変動ではなく電⼒システム全体の需給変動への対応に活⽤されます。系統の品質向上と安定化を図るうえで、電力の需給バランスや周波数、電圧の調整役を担う系統用蓄電池は、今後日本の脱炭素社会移行を加速するために欠かせないシステムといえます。
系統用蓄電池の役割
系統用蓄電池の主な役割は以下2つです。
まず一つ目が「電力系統の安定化」です。
国内では2050年のカーボンニュートラル達成を目指し、再生可能エネルギーの導入数増加に向けた取り組みを進めています。
しかし電気の性質上、通常は発電した電気を系統へ貯蔵できず、再エネの発電量を増やしても電力需要を超える電気を有効活用できません。加えて、電気は需要と供給を一致させなければ、大規模停電(ブラックアウト)を引き起こすリスクがあります。
そこで、系統用蓄電池を利用すれば系統内で電気を貯めておくことができるため、電力需要が高く供給量が不足する状況下でも電気を安定的に活用できるようになります。よって、系統用蓄電池は再エネ比率増加に伴う電力安定化のため、導入拡大が期待される設備といえます。
そして、二つ目は投資効果を狙った「事業利用」の役割です。
2022年5月の電気事業法改正により、蓄電池を活用した市場取引が解禁になり、系統用蓄電池は高い収益性を持つ投資としての可能性が期待されるようになりました。
系統用蓄電池は、家庭用や産業用の一般的な蓄電池とは比べ物にならないほど多くの電力を蓄えることができるのも特徴のひとつです。この蓄えた電力をまとめて市場取引することで収益を得る投資的な事業利用が多くの事業者から注目されています。
電力の売買はJEPX(日本卸電力取引所)や需給調整市場、容量市場など国内の電力取引市場を用いて行います。
系統用蓄電池を使って投資を行う場合、売買のタイミングさえ間違えなければ、安定的な利益を見込めますが、電力市場の動向に合わせた売買や先の見通しを立てるなど、運用には専門知識が必要になるため、アグリゲーターなどに運用代行を依頼するのが一般的です。
まとめ
系統用蓄電池と再生可能エネルギーの発電設備へ併設する蓄電池(再エネ併設蓄電池)を比較すると次のような違いが挙げられます。
再エネ併設蓄電池 | 系統用蓄電池 | |
接続方法 | 発電設備へ接続 | 系統へ接続 |
社会的役割 | 再エネ比率向上、利用効率化 | 系統の品質向上と安定化 |
運用用途 | 自家消費 災害時の非常用電源 | 裁定取引をはじめとした事業利用 |
効果 | ピークカット、ピークシフト | 電力の需給バランスや 周波数、電圧の調整 |
再エネ併設蓄電池が、発電設備の電力利用を効率的にするのに対し、系統用蓄電池は国内電力の本流といえる系統が抱える再エネ余剰電力を蓄電することで、需給バランスの調整や系統混雑の解消に役立つ設備といえます。したがって、結果的に再生可能エネルギーの増加、カーボンニュートラルに貢献するとても重要な役割を担っているといえます。
Grid Biz.は、系統用蓄電池ビジネスに関連する情報を分かりやすくまとめ随時発信することで、事業の全貌把握や認知向上に努めています。事業に関する困りごと、ご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。