長期脱炭素電源オークション

将来の供給力を確保する容量市場には、単年度分の供給力を確保するメインオークションや追加オークションの他に、「長期脱炭素電源オークション」があります。このページでは、オークションの概要や仕組み、系統用蓄電池との関係性について解説していきます。


長期脱炭素電源オークションとは

長期脱炭素電源オークションは日本において、再生可能エネルギーやその他の脱炭素電源の普及を促進するために導入された制度です。主に、2050年カーボンニュートラル社会の実現に向け、発電事業者や電力会社が長期にわたり安定した脱炭素電力を確保・供給することを目的に2023年度よりスタートしました。



仕組み

長期脱炭素電源オークションの仕組みは、電力需要家が長期間にわたって脱炭素電力調達の契約を行う、すなわち固定収入の確保を目的としています。このオークションに参加する発電事業者は、再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオマスなど)やその他の脱炭素電源(例えば、水素やアンモニア発電など)を供給することが求められ、参加者は指定された期間内に電力を供給する契約を獲得するため、価格や供給条件を入札します。

オークション方式は、各入札者が提示した価格で契約が成立するマルチプライス方式が用いられています。この方法は、各事業者に応じて柔軟な価格設定が可能で、競争的な市場形成を促進する特徴があります。また、オークションで約定した電源の発電事業者は固定費水準の容量収入が原則20年間得られる仕組みです。また、メインオークションと同様に、発電事業者等が得る容量確保契約金額は、小売電気事業者等の容量拠出金から支払われる仕組みとなります。

このオークションにおける大きな特徴は、電力の供給者と需要者が長期の契約を交わす点です。これにより、供給者は安定した収益を得ることができ、脱炭素電源のプロジェクトに対する資金調達や長期的な運営の見通しが立てやすくなります。


入札方法

長期脱炭素電源オークションへは、事前に資格審査を受け、要件を満たした発電事業者や電力会社のみが参加できます。入札の際には、供給できる電力量と希望する応札価格を提出し、他の参加者との競争によって最終的な約定価格が決定されます。

入札プロセスは以下のように進行します。

  • 事前資格審査
    入札者は、技術的な要件や供給能力に関する審査を受け、オークションに参加する資格を得ます。

  • ● 入札
    入札者が供給できる電力の量や供給期間、希望する取引価格で応札します。

  • ● 約定
    入札価格や条件を基に、需要家が最も有利と判断した供給者が選定され、契約が結ばれます。


メインオークションとの違い

メインオークションは、4年後に必要な発電能力(供給力)を単年度ごとに取引するのに対し、長期脱炭素電源オークションは、長期にわたって供給される再生可能エネルギーや脱炭素電源に特化しています。メインオークションでは、その時々の需給バランスに応じて価格が決定されるため、価格の変動が大きく短期的な価格リスクがあります。

一方、長期脱炭素電源オークションは長期間にわたって安定した電力供給を目指すため、価格は比較的安定しており、電力価格のリスクが抑えられます。また、脱炭素電源に限定されているため、供給元の環境負荷が低いという点も特徴です。



長期脱炭素電源オークションにおける系統用蓄電池の必要性

長期脱炭素電源オークションは、再生可能エネルギーや脱炭素電源を長期的に供給するための制度です。しかし、再生可能エネルギーの不安定な供給を補完するためには蓄電技術が不可欠です。系統用蓄電池は、供給の変動を平準化して安定した電力供給を実現する役割を果たします。これにより、再生可能エネルギーによる長期供給契約がより実現可能で信頼性の高いものとなります。

蓄電池を組み合わせることで、発電事業者はオークションでの入札においてより競争力のある提案を行い、供給の安定性をアピールすることができます。特に、再生可能エネルギーが普及して電力市場における脱炭素電力の需要が高まる中で、蓄電池を活用したシステムはオークションにおける有力な入札の一要素です。



蓄電池の利点と課題

利点

系統用蓄電池は、再生可能エネルギーの供給を安定化させるだけでなく、ピークシフトの実現にも役立ちます。これにより、電力需要が高まる時間帯に電力供給が円滑に行われ、電力市場の効率化が図れます。また、蓄電池を活用することで需要が少ない時間帯に蓄電し、需要が多いときに放電することで、電力の価格変動リスクも低減できます。


課題

蓄電池はコストが高く、大規模な導入には初期投資が必要です。また、技術的にも蓄電容量や寿命に限界があり、これをどのように経済的かつ効果的に活用するかが鍵となります。オークションでの価格設定においても、蓄電池の導入コストが入札価格にどの程度反映されるかが今後の重要な課題です。



系統用蓄電池の導入と今後の展望

長期脱炭素電源オークションにおいて、系統用蓄電池は今後さらに重要な役割を担うことが予想されます。再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、蓄電技術の進化やコストの低下が期待されており、発電事業者が蓄電池を組み合わせた提案を行うことで、オークションでの競争力を高めることが可能です。また、電力需要と供給のバランスを取るために、電力会社や政府も蓄電池の活用を推進しており、補助金や税制優遇措置などの支援策も検討されています。

将来的には、蓄電池のコストがさらに下がり、蓄電容量の拡大や技術の進展により、長期脱炭素電源オークションにおける蓄電池の活用がより一般的になると考えられます。これにより、再生可能エネルギーの更なる普及と、安定した脱炭素電力供給の実現が期待されます。



直近の約定結果

直近のオークション結果については、発電事業者が入札した価格や供給条件に大きな変動が見られます。特に再生可能エネルギーのコスト低減や技術革新により、より競争力のある価格での約定が進んでいます。2023年度のオークションでは、全体で976.6万kWの電力量が約定され、特に電源方式別では蓄電池で募集容量を大きく超える455.9万kWの応札がありました。


引用:電力広域的運営推進機関, 『容量市場長期脱炭素電源オークション約定結果』, 2024年4月26日, https://www.occto.or.jp/market-board/market/oshirase/2024/files/240426_longauction_youryouyakujokekka_kouhyou_ousatsu2023.pdf

また、エリア別の応札容量・落札容量は四国を除くエリアで落札容量を超える応札があり、北海道、東北、北陸では落札容量の2倍近く、九州では3倍を超える応札がありました。


電力広域的運営推進機関,『容量市場長期脱炭素電源オークション約定結果』, 2024年4月26日, https://www.occto.or.jp/market-board/market/oshirase/2024/files/240426_longauction_youryouyakujokekka_kouhyou_ousatsu2023.pdf

将来的には、再生可能エネルギーに加え、水素発電やカーボンニュートラルな燃料を使用した新技術の普及が期待されており、これにより入札価格や供給条件がさらに多様化することが予想されています。



まとめ

長期脱炭素電源オークションは、日本が目指すカーボンニュートラル社会に向けた重要な仕組みです。長期的な契約を通じて、脱炭素電源の安定した普及を促し、再生可能エネルギーの利用を拡大しています。

また、系統用蓄電池は再生可能エネルギーにおける供給の不安定さを補完し、長期脱炭素電源オークションにおいて重要な役割を果たします。蓄電池を活用することで、発電事業者は安定した電力供給を実現し、オークションでの競争力を高めることができます。一方で、コストや技術的な課題も存在しますが、今後の技術革新やコスト低減により、蓄電池の導入が促進され、脱炭素電力供給の拡大と安定化が期待されます。

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